4月14日21時26分まで、熊本では大きな地震はないと熊本県民は思い込んでいたが、地震は起こった。一方、戦後の日本国民の多くは「日本は憲法9条さえ守っていれば平和が維持できる」と思ってきた。今もそうだ。この両者の思い込みが私には瓜二つに見えてならない。
6月6日の産経新聞で、桜井よしこさんが、週刊誌AERA5月16日号の記事を紹介する中で、次のように書いておられた。
「自衛戦争を認めるか、認めないか」という質問に対して、
女性はすべての世代において「認めない」が「認める」よりも多かった。
男性の3分の1が自衛でも戦争は認めない、と答えていた。
「他国や武装組織の日本攻撃にはどう対処すべきか」という問いに対しては、
・日本には攻めてこないと思う。
・外交の力で攻めてこないようにすればよい。
・日本は戦争しないで米軍に戦ってもらえばいい。
という答えが並んでいた、というのである。
まさに、戦後の我が国民の「平和ボケ」は現在進行形だという事実を突き付けられた思いである。
そして6月中旬には、中国海軍の艦船が、尖閣の日本領海近くの接続水域に侵入してきたのに続き、鹿児島県口永良部島周辺の日本領海を中国海軍の軍艦が侵入。
これだけではない。この同じ時期に、尖閣諸島周辺の公海上空で、日中の戦闘機が空中戦の一歩手前までいく事態になっていたことがわかった(産経新聞7月1日「主張」)というのだ。緊急発進した自衛隊機に対して、中国機がミサイル発射体制をとり、自衛隊機はミサイルを回避する装置を作動させて事なきを得たが、極めて異例の一触即発の深刻な事態だ。
自衛隊トップの河野統幕議長は6月30日の記者会見で、今年になって4月~6月にかけて、日本領空に接近した中国軍機に対して我が航空自衛隊機が緊急発進する回数が急増し、この2か月で約200回に及ぶと発表した。
アメリカは大統領選挙、日本は参議院選挙。この隙をついての中国のあからさまな挑発行為が連続している。まさに一触即発の状態だ。
これでも「日本には攻めてこない」というのか。「外交の力で攻めてこないように」努力するのは当然だが、相手が聞く耳すら持たないのに、どうすればいいというのか。
「米軍云々」は論外だ。米国が大統領選に向けてどのような状況にあるか、知らないのだろうか。共和党の候補者になることが確実となったトランプは、「日米安保条約は不公平だ」と主張して、アメリカ国民の人気を博している。自分の領土を自分で守ろうともしないで、「米軍に戦ってもらえばいい」と、本気で考えているのか。もしそうだとしたら狂気の沙汰としか言えない。
現に、尖閣防衛に関しての日本とアメリカの約束は、日米防衛ガイドラインで次のようになっている。
「尖閣防衛は、第1義的な責任があるのは日本。米国は、適切な支援をする」
つまり、米軍はあくまでも「支援」であって、しかも「適切」な範囲でだから、米国内の世論や大統領の判断にゆだねられる。自分で守らないと米軍は守ってくれないということ。
ジェームス・E・アワーという日米の安全保障の専門家は、産経新聞1月3日号で、次のように述べている。
「安保法制は確かな前進です。しかし、依然、日米同盟は対等なパートナーシップではない。日本が、米国に対して安全保障でより尽力するなら、米国も日本の安全保障により貢献するようになるでしょう。しかし、もし日本が尽力に消極的なら、米国民は、なぜ日本は米国を助けないのに米国は日本を助けなければならないのだろうと思う。」
この8月号が皆さんの手元に届くころは、すでに参議院の選挙は終わっているが、選挙で「安保法制の廃止」で野合して戦っているあの人たちは、安保法を廃止してもアメリカ軍は日本を「支援」してくれると思っているのか、それともこの期に及んでも中国は攻めてこないと本当に信じているのか。それとも自衛隊だけで守れると思っているのか。ホンネは中国の属国になってもいいということか。
一番、平和ボケしているのはこのような政治家たちだという事実ほど、日本にとっての悲劇はない。
大きな地震はないと、何等の根拠もなく信じていた熊本県民。そして、「平和ボケ」した政治家やマスコミ。そして多くの日本国民。
この閉塞した状況に突破口を開けるのは、若者のシビアーな現実感覚だ。
生徒たちの熊本地震被災体験の感想文の中で、安全保障に関して、国民に蔓延(まんえん)する「平和ボケ」を吹っ飛ばす様なインパクトのある率直な意見が、多数寄せられている。
では、高校生のホンネをお読みいただきたい。
<2年女子 M・Mさん>
熊本に地震は来ないから大丈夫と思っていたことで大きな被害が出た。それは戦争も同じで、「日本を侵略する国などない」と思っていても明日近くでテロが起こるかもしれない。
しかし、日本人は憲法という国内法で自分の国を守るために抵抗しないと言っている。そして国を守るために戦う準備をすると戦争が起こると批判する人がいる。
でも実際戦争やテロが起こってしまったとき、国民を守るため戦う準備がなければ、日本はすぐに終わる。終わらせたくなければ守るために戦わなければならない。
私は、一刻も早く自衛のための軍事力を強化すべきだと思いました。
<2年男子 M・D君>
自分は、災害は起こらないのではなく必ず起こると思って備えなければならないと思いました。ただし、災害への備えは被害を小さくするためのもので災害の発生を止めることはできません。しかし、戦争は備えがあれば防げると思います。何もしないと戦争は防げないということです。ですから災害も戦争も備えをすることはとても大事だなと思います。
<3年男子 I・T君>
私は、戦後70年間の日本は平和ボケしていたと思います。バカな政治家やマスコミ、シールズなどの市民団体が、9条を守っていれば大丈夫などとバカげたことを言っていて、甘い考えしてるなといつも思います。
国を守るために戦う準備をすると戦争になると、批判する人たちがいますが、戦争にならないためにこそ、戦う準備が必要なのです。
アメリカが助けてくれるなどと言っている人たちがいますが、自分の国は自分で守るのが基本です。
<3年男子 N・K君>
自分は、日本に戦争は起こらないと思っている日本人は、「平和ボケ」だと思います。
憲法9条があるから大丈夫?本当にそんなに思っているのでしょうか。憲法は自国のルールでしかありません。他国が守るルールなどでは決してないということです。
日本では何も起こらないだろうと思っている「平和ボケ」した人が、この日本にどれだけいるのでしょうか。僕たち高校生は心配しています。
紙面の都合で、今回は4人しか紹介できないが、このような意見は決して特別で少数派ではなくむしろ多数派なのだ。未来は若者のもの。正しい情報を伝えさえすれば、現実を直視して判断できる能力は、若者ほど優れている。若者のこの現実感覚に日本の未来を託すしかない。