特別編の①と②で、日本国憲法が日本人が作ったものではなく、アメリカの占領軍の手によって作られ、占領下にあった日本に押し付けらえたものであったことを学びました。
日本人が作った憲法だと思い込んでいた皆さんはさぞかし大きな衝撃を受けたことでしょう。
しかし、たとえそうであっても、この平和憲法があったから戦後の長い間日本の平和が守られてきたのだから良いではないかと、思った人もいるでしょう。
本当にそうなのでしょうか。日本の平和に関することですから「嘘やごまかし」があってはいけません。特別編その3では、日本の平和と憲法の関係について何が「真実」なのかをテーマに学びましょう。
1、「平和憲法」とは何か
皆さんは、日本の憲法は平和憲法だと、いつも聞いてきたと思います。では何を以て平和憲法というのか知っていますか。まずそのことから復習しましょう。
(1)平和憲法とは「前文と9条」のことです。
①日本国憲法の前文の次の1節を絶対平和主義といいます。
「…平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した…」
この意味は、例えて言うと
「中国や北朝鮮の皆さん、あなた方は尖閣諸島を奪ったり、日本国民を拉致したりするような人たちではないと信じていますから、日本の領土や日本国民のいのちはあなた方にお預けして、日本の政府は領土を守ることや国民の命を守ることは決していたしません」
という宣言だといって過言ではありません。これでは国家とは言えませんよね。
②第9条はこの前文の絶対平和主義を条文化したものです。日本国憲法第9条の規定は次の通りです。
第1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第2項 前項の目的を達するため陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
(2)9条の矛盾=自衛権はあるが交戦権はない
①第1項が「平和主義」と言われている規定です。この規定は日本独自の崇高な精神だと教わってきたと思います。最近、この9条を世界遺産にしようなんてこと主張している人たちがいるようですが、これは日本独自のものではないのです。第1項のいわゆる平和主義は、世界で憲法を持つ国188か国のうち158の国の憲法が日本と同じような平和主義をうたっています。
この「平和主義」の規定で注意しなければならないのは、「自衛権」つまり自国を他国の侵略から守る権利は否定していないということです。日本国憲法もそうです。
日本国憲法の特徴は、この第1項ではなくて第2項の方なのです。1項で自衛権は否定していないから持っている。しかしその2項で「交戦権」を認めないとしている。国を他国の侵略などから守る権利はあるが、そのために戦うことはできないということなのです。ではどうやって国を守ればいいのですか。
(3)自衛隊と憲法の関係
「それでも自衛隊があるじゃない。自衛隊が守ってくれるのじゃないの?」と質問されそうです。ここが一番核心の部分です。
自衛隊と9条の関係はどうなっているかというと、自衛隊の組織は、1項で否定していない自衛権に基づいているということ、しかし交戦権が与えられていないから、いざという時は、警察官職務執行法を準用して戦うということになっています。
つまり正当防衛や緊急避難に該当する場合にのみ武器が使用できるという規定です。警職法は国内法です。国家の防衛は国際法を基準としなければなりません。日本の自衛隊だけがこのような根本的な矛盾(むじゅん)を持っているということです。つまり実力はあっても、両手両足を縛られた状態にあるというわけです。
これでは国を守るために存分に戦うことはできません。ですから安保条約でアメリカに保護してもらっているという訳です。このような日本では真に自立した国家とはならないのです。
2、戦後日本の平和は平和憲法が守ってきたという「嘘(うそ)」
皆が思わされてきたように、戦後日本の平和を守ってきたのが「平和憲法」だったのならば、世界のほとんどの国の憲法が平和憲法なのですから、戦争は起こらなかったはずです。しかし現実は皆さんが知っている通り、頻繁(ひんぱん)に世界のどこかで戦争が起こってきたし、今も戦争している国があるではありませんか。
「僕は何をされても一切抵抗しません」と言い続けると、誰もいじめたりしなくなるでしょうか。そんなことはありませんね。いじめ防止のためには、理不尽な暴力には徹底して抵抗する心の姿勢を持つことです。たとえ負ける相手であってもです。するとあいつには手を出すなと必ずなる。
平和憲法は、むしろ今まで日本の平和を脅(おびや)かし続けてきたのであって、断じてこの憲法があったから平和だったのではありません。
では、戦後の日本が平和な時代を謳歌(おうか)できたのはどうしてでしょうか。次にそのことを学習しましょう。
3、日本の平和は日米安保体制と自衛隊で守られてきた
(1)戦後の国際社会の実態は東西(とうざい)冷戦(れいせん)時代だった
第2次世界大戦後の国際社会は、世界秩序は戦勝国の連合体が組織した国連によって守ろうという理想のもとに始まりました。
しかし、実態はソ連(今のロシア)の膨張(ぼうちょう)主義(しゅぎ)をアメリカが抑えるという米ソ対決の緊張の時代となりました。そして、世界中の国々がアメリカを頂点とする自由主義陣営(西側)と、ソ連を頂点とする社会主義陣営(東側)とに分かれて、常に緊張した国際社会となりました。その緊張状態は、米ソの核兵器をはじめとする軍拡(ぐんかく)競争(きょうそう)で微妙な軍事力のバランスが保たれることによって、暴発が抑え込まれてきたのです。
この状態を東西冷戦と呼びます。実際の戦争(HOT WAR)に対比しての表現です。
日本はその最前線にあって常にソ連の脅威(きょうい)にさらされてきました。
(2)自衛隊と日米安保条約がソ連の脅威から日本を守ってきた
まず東西冷戦の中にあって、西側に属する日本への攻撃はアメリカへの攻撃とみなされるから、自ずからソ連の暴走は抑えられてきたことはいうまでもありません。加えて自衛隊の働きがありました。自衛隊は憲法9条2項で交戦権が与えられていないのに日本の平和に貢献できたのかと疑問に思った人がいるかもしれませんね。しかし大きな役割を果たしてきたのです。
例えば他国の戦闘機が領空侵犯をします。すると自衛隊機がスクランブルといって、緊急発進して侵犯機に近づき領空から出ていくように警告するわけです。自衛隊機はこちらから攻撃することはできませんが、敵が攻撃したら正当防衛で攻撃できますね。通常スクランブルは2機で行われますから、僚機(りょうき)(味方の飛行機)が攻撃されたら攻撃されてない方が攻撃できる。
先に攻撃された方は撃墜(げきつい)です。だからまさに自衛隊員は常に命がけなのです。
矛盾は抱えているけども、決して無力ではないのです。また自衛隊機を攻撃したらアメリカを攻撃したことにもなるから、それはできないのです。同じことは陸でも海でも言えます。
つまり、東西冷戦時代は、日米安全保障条約体制と自衛隊が平和を守ってきたのであって、平和憲法はむしろ平和を脅かしてきたのです。