1960年代から80年代にかけて世界的に活躍した歌手で坂本九という人を知っていますか。43歳のときに飛行機事故でなくなりましたが、大ヒット曲「上を向いて歩こう」は、今でも世界中で歌われていることでしょう。
今日は「上」ではなく「前」を向いて歩こうという話です。
人間の生き方にはいくつかのタイプがあります。君には分りますか?
人生を、後ろ向きで歩くタイプ、カニみたいに横歩きするタイプ、そして前を向いて歩くタイプです。君はどちらのタイプですか?どちらのタイプの人間が青い鳥を持ち帰ることができるかわかりますね。
分らなければ実際に歩いてみればいいですね。まず後ろ向きで歩いてごらん。ただし一般道路では危ないからやってはだめだよ。誰もいない運動場であっても何かにぶつかりそうで怖くて歩けたものではないね。次に横歩きしてみようか。これも同じで、怖いし、歩きにくくて長くはできないよね。
やはり歩くときは前を向いて歩くほうが良いに決まってる。
しかし人生となると、多くの人が後ろを向いたり横を向いたりして歩いているのです。後ろ向きというのは、過去のことばかりこだわって悔やんだり悲しんだり悔しがったり愚痴ったり、あるいは昔の自慢話ばかりしたりというタイプです。お年寄りに多いよね。
横を向いて歩くタイプというのは、人の目や世間体ばかり気にして暮らす人のこと。これは若い人や社会的地位が高い人に多いタイプです。
ある女子生徒のお母さんから相談を受けました。その子は、いつも他人が自分の悪口を言っていると思い込んで、自分の部屋に引きこもっているというのです。この子の場合、何かのきっかけで人が信じられなくなったのとコンプレックスが重なって、被害妄想にとらわれているのです。典型的な横歩きの癖がついてしまった例ですね。横ばかり向いてたらさっき歩いてみて分ったように怖いし、とても歩きにくいから外出できなくなるのです。
その相談を受けて間もなく、その子がスクーリングに参加したので、北京オリンピック直後でもあり次のような話をしました。
北京オリンピックの柔道男子66キロ級で2大会連続で金メダルを取った内柴正人選手は、「勝つと思ってた。勝つとずっと思ってた」そうです。同じく2大会連続で女子63キロ級で金メダルに輝いた谷本歩実選手は「試合の間もワクワクしていました。(決勝戦の)今日も組んだ瞬間に気持ちがあふれて笑顔が出ました。試合ができることがすごく嬉しくて、きついとかはぜんぜん思わなかった」そうです。
一方、期待にこたえられずに敗北した選手は、負けたくない、負けたくないと思っていたに相違ないのです。
どこが勝者と敗者の別れ道になったか。勝ったほうは「勝つ」という目標のみを見て結果を信じていました。つまり「前を向いて」歩いていたのです。だから勝てた。負けたほうは、負けたくない負けたくないと相手のことが気になって仕方がなかった。「横向き」で歩いていたのです。だから負けた。横向きでは怖いから足がすくんでしまったのでしょう。まずカニではあるまいし横歩きでは歩きにくくてどうしようもない。
こんな話をした後で、前回の「一寸法師」の打ち出の小槌(こづち)の話をしました。
横を向いたり後ろを向いたりして歩いていると、心の中の鬼たちが「打ち出の小槌」を振って、もっと怖がれ、もっと心配しろといって「期待」にこたえているのです。一方、前を向いて歩いているときは、一寸法師が打ち出の小槌を振って「もっと良くなれ、もっと良くなれ」といって期待にこたえているのです。
他人がいつも自分の悪口を言っていると思うことは、心の中の青鬼や黒鬼は、悪口を言って欲しくないという君の思いを反対に受け止めて、悪口を言って欲しいのだなと思って「打ち出の小槌」を振るのです。
だからまっすぐ前を向いて歩こうよ。
前を向くということは、自分の将来に幸せの青い鳥がいると信じることです。そしたら本当にその青い鳥が飛んできて君の肩にとまるのです。(本当は今既にとまっているのだけどね)もちろん時々後ろを振り返ったり、周りを見回したりしたっていいんだよ。ただしそのときは何かにぶつからないように、ちょっと立ち止まった方がいいな。
青い鳥を探す旅の心得その1は、前を向いて歩いていくということでした。横向きや後ろ向きで歩いていては、青い鳥は逃げてしまうのです。