校長の道徳授業

歴史を訪ねて5 マレーシアの人々の熱き思い

2011.08.15

時間空間を超越して旅行ができる夢のタイム・マシーン「勇志号」での今月の旅は、昭和45年から47年の頃のマレーシアが行き先です。ではさっそく出発しましょう。「出発・進行!」

もう着きましたよ。本当に便利な乗り物ですね。ここはマレーシアの南端ジョホールバルーの警察本部の前の広場ですね。大勢の警察官が何か訓練をしています。柔道着を着た日本人が指導しています。逮捕術の訓練中ですね。

「あれ!校長先生みたいな人だ」

「いやあ、なつかしいなあ。実はあれは私なんです。青年海外協力隊で派遣されて柔道と逮捕術を指導してきましたが、あれはその頃の一コマです。まだ25歳の頃か。さすがに若いな」

訓練が終わりました。逮捕術の先生の僕と何人かの警察官が今夜いっぱいやろうという約束ができたようです。マレー人はイスラム教だからお酒は飲まないけど、インド系やチャイニーズ系はよく飲むのですよ。今日はインド系の連中ですね。

南国の夜です。空には満天の星、本当にあの頃の南国の星空はまさに宝石をちりばめたようです。あれが南十字星ですよ。さあ、それでは酒盛りの会場になった警察幹部社交場に入ってみましょう。やってるやってる。若い頃は僕もお酒が強かったからなあ。インド系マレー人のラティフ警部と日本人の僕がずいぶん真剣な会話をしているね。しばらく聞いてみようよ。

「ミスター・ラティフは街角で日本の若者の旅行者を見かけると、必ず声をかけて自宅に招待して家族で大歓待して何日も泊めた上でお小遣いまで持たせて送り出すことを繰り返して、みんなから変人扱いされているけど、なぜそこまでするのかい?」

当時はヒッピー族と称する日本の若者たちが海外で無銭旅行したりして、各地で顰蹙(ひんしゅく)を買っていたのだよ。ラティフ警部はその連中の面倒を見て仲間から批判されていたのです。

「私は日本の青年の本音を聞きたいのです。日本人はシャイだから何日か一緒に生活しないとなかなか聞き出せないからね」

「聞きたい本音ってなんだい?」

「よくぞ聞いてくれました。私が聞きたいのは大東亜戦争について日本の若者が何を考えているかということさ」

「それで、彼らの答えはどうだい?」

「それが、みんなハンコで押したように、アジアの国々を侵略して大変迷惑をかけましたといって、謝るのだよ」

「ミスター・ノダ、俺は謝って欲しくてこんなことをしてるのではないよ。マレーシアは日本の大東亜戦争のおかげで数百年間にわたって植民地として支配されてきた立場から独立して今日があるんだ。俺の先祖の国インドもそうだ。いや今独立しているアジアやアフリカなどの国々はみんなそうだ。日本は自らを犠牲にして有色人種の国々を、白人国家による植民地支配から解放してくれたのだ」

「俺が彼らから聞きたいのは、その日本の輝かしい歴史に対する日本の若者としての誇りなのだ」

「ミスター・ノダ、日本の若者はどうしてこんなになってしまったんだ。俺は悲しい」

ラティフさんはとうとう泣き出しました。今夜は朝方まで続きそうだからこの辺でお暇しようか。

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昭和45年のマレーシアというと、マラヤ連邦としてイギリスの植民地から独立して13年、マレーシア連邦が成立してまだ7年しか経っていません。

世界の歴史は、1492年のコロンブスによるアメリカ大陸発見から大航海時代に入ります。その実態は欧米列強による非欧諸国(南北アメリカ、アジア、アフリカなど有色人種の国々)に対する武力による侵略と植民地支配の歴史でした。

マレーシアはマラッカ王国がその発祥の地ですが、1511年にポルトガルにより軍事占領されます。1641年ポルトガルに代わってオランダが植民地として支配。1824年オランダに代わってイギリスによる植民地支配が始まる。

1941年、東亜(東アジア)民族の独立を目的として掲げた大東亜戦争が始まる。緒戦における日本の破竹の進撃により、イギリスが降伏し、同国によるマレーシアにおける植民地支配の長い歴史は幕を閉じた。そして日本軍による占領統治となり独立を目指すも、1945年、日本の敗戦によって、再びイギリスによる植民地支配が復活。しかしマレーシアの人々は最早以前のように支配される立場に甘んじる人々ではなかった。その独立の気概は日本のあの大東亜戦争緒戦における大勝利によってもたらされたものであった。1957年、マラヤ連邦として独立。1963年、マレーシア連邦成立。以上がマレーシアの歴史の概略です。

ラティフさんが涙ながらに訴えていたのは、この大航海時代以来の欧米列強国による有色人種国家の植民地支配というおぞましくも長い歴史を終わらせたのが、日本の大東亜戦争だったんだということ、そしてそのことへの誇りどころか贖罪(しょくざい)意識しかもたない戦後の日本人への失望と憤慨だったのです。

これは決してラティフさんの個人的な感情に基づいた特殊な歴史観ではないことを、現地で2年間生活した私は知っています。

この歴史探訪は、しばらくお休みして、時機を見て再開したいと思いますのでお楽しみに。


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