~「人権意識の進化」が求められている(2)~
<正月号から続く>
(2)「新しい時代の人権思想」を発信する
①基本的人権とは「幸福追求権」のことである
「基本的人権」とは「幸福追求権」であると、アメリカの独立宣言でうたわれています。
日本国憲法では、その第13条の後半に「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と、書かれています。
これは、この憲法の草案を作成した当時のGHQが、アメリカ独立宣言から引用したものです。
②人は皆、幸せになるために生まれてきて幸せになるために生きている
人間が生まれながらにして与えられている「基本的人権」が幸福追求権であるということは、人は「幸せになるために生まれてきて、幸せになるために生きている」と解釈されなければなりません。
③幸福になる方法は、人を幸福にすること
では、「幸せになる生き方」とはどういう生き方なのでしょうか。それぞれの価値観で幸せは異なってきます。1億人いれば1億の幸せがあるということです。しかし、すべての人の人生に共通するものがあります。それは、「人は、自分の幸せのみを追求しても幸せにはなれない」ということです。利己心から幸せ感は得られないということです。そして、人が幸せを実感できるのは、「人を幸せにした」時、またはそのために努力している時です。
この場合の「人」は、自分以外の「人」であり、またそれは、人と人との絆の集合体である各種の共同体や国家まで含めての意味です。
つまり、利他心に基づく行動によって幸せ感が得られるということです。このことに理由はありません。人間とはそういう存在なのだというしかありません。そしてそのことは、だれもが体験的に知っていることです。
④「利己心」から「利他心」へ
「新しい時代の人権思想」とは、今までの「自分の幸福追求権(人権)の主張」という利己心のレベルから、「人の幸福追求権(人権)を尊重する」という利他心のレベルに「人権思想」を進化させるということなのです。
「人権思想」は長い歴史を経て、今日のさまざまな多くの恵を人類にもたらしてきました。しかし、今、その「人権思想」が大きな転機を迎えているのです。
それが、「自分の人権の主張」から「人の人権尊重」へ、利己心から利他心へ、個人主義から共同体主義への「人権意識のレベルアップ」、つまり進化の時を迎えたということです。
第4章 今からの日本人の使命
1、独自に発達してきた「和の文化」
「人権思想の進化」が求められている世界にあって、私たち日本人に与えられた使命は何なのでしょうか。つまり私たち一人ひとりはどのような生き方をすればいいのでしょうか。このことについて一緒に考えてみましょう。
ここで忘れてならないことは、日本の文化は「和」の文化だということです。それは縄文時代から育まれ、歴代天皇によって伝えられてきた日本独自の文化でもあります。
実は、この「和」の文化こそが、「新しい時代の人権思想」の基本となる「文化」なのです。
(1)「和」は日本の建国精神
世界の国々は、それぞれに建国の精神があります。日本の建国の精神は「古事記や日本書紀」に書かれていますが、竹田恒泰氏はその著書(「日本の国体が分かる国体の授業」PHP)の中で、
「どのようにして日本という国ができたのか、どのようにして国家が運営されてきたのかを、歴史を調べて二千年間追ってみたら、回答は一つしかありません。それは『和』です。『和』の精神こそが、日本の建国の精神だとい うことです。日本国民は和の精神によって統合されているのです。」
と、書いておられますが、日本の代名詞が「和」であることからもそれは理解できることですね。
(2)「和の文化」の基本は「利他の心」
では、「和」の文化の基本は何でしょうか。竹田氏は同じ著書の中で「和とは、自分のことは後回しにする精神」だと述べ、それは「自分のことは後、まずは仲間のために働こう」「正しく生きた先に自分の幸せがある」と思うことだと、説明されています。
つまり、「和」の文化というのは、まさに「自分の人権(幸福追求権)を主張すること」ではなく、「人の人権(幸福追求権)を尊重する」ことなのです。それこそが「正しい生き方」であって、「その先に自分の幸せがある」というのです。
「人を幸せにすると自分が幸せになる」という価値観が「和」の文化であって、それは日本の国柄そのものであり、日本人の精神の基本だったのです。
確かに戦後は、徐々にその日本の文化は薄れてきていました。しかし、東日本大震災や熊本地震などの大きな災害に見舞われた時、被災地では一瞬にしてそれがよみがえって、世界中を感動させました。私たち日本人のDNAに、「和」の文化は、しっかりと組み込まれていたのです。
(3)「和」の文化が、世界の「人権意識」を進化させる
世界の自由主義国の国民が「孤独」という新たな「人権問題」で苦しんでいますが、その解決策が模索されています。「人とのつながり(絆)」を再構築していく方法はないかというわけです。
日本社会は、縄文時代から続く「絆」社会でした。そのもとに「和」の文化があったのです。「和」の文化は、「自分のことを後にする」文化です。つまり、「人を幸せにすることで自分も幸せになれる」という価値観でした。そしてその価値観が生きていた時代に日本人は、「貧しいけど、みんな幸せそうだ」と、訪れた外国人に衝撃を与えたのです。(「逝きし世の面影」渡辺京二)
(3月号に続く)