勇志国際高校では、例年全国3会場で卒業式を執り行っていますが、今年も例年同様1日が熊本市内、2日は福岡市内、そして9日は東京での開催です。勇志は広域制ですから、在籍者の中には地理的条件などでこの3会場にも参加できない人が多数います。ですから、参加できなかった卒業生や保護者様に読んでいただきたく、校長式辞のつもりでこの原稿を書かせていただきました。
今年度は420名の卒業生を送り出すことになります。これで開校以来の卒業生の総数は4518名となりますことを、まず冒頭ご報告いたします。
420名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。在学中はそれぞれにいろんなことがあったでしょうが、それらを見事に乗り越えての今日の卒業となりました。ひとえに皆さんの頑張りと保護者様のお支えがあったからです。
さて、今、日本は「世界で最も信頼されている国」だということを知っていましたか。
外務省が平成30年2月から3月にかけて実施した「対日世論調査」の結果、調査対象国のすべてで70%以上の人々が「日本は信頼できる国」と答えました。
トップはインドで、94%という驚異的数値を示しました。続いてアメリカの87%、アセアン(東南アジア諸国連合)10か国84%、オーストラリア76%、中南米5か国70%です。とりわけアメリカやオーストラリアは、第二次世界大戦で日本が戦った旧敵国です。それらの国でこれほど高い信頼を勝ち得ているという事実は、戦後という時代、つまり日本が敗戦国だった時代が、国際社会において、今、確実に終わろうとしていることを示唆しています。
新しい時代が始まるのです。国内の教育や歴史も、それに応じて、いわゆる自虐史観から脱皮して、日本人が誇りを取り戻してゆく時代になってきたのです。
そして本年は、時あたかも御代替わりの年です。天皇陛下のご譲位により、5月1日から現在の皇太子殿下が新天皇にご即位されます。新しい元号は、4月1日に発表されます。
世界各国から国賓を多数招いて、世界注視の下、厳かに古式豊かに、伝統に則った各種儀式が執り行なわれます。日本の伝統文化や天皇陛下を中心に安定した国柄のすばらしさを、世界中の人々が再認識し、日本への信頼はさらに高まることでしょう。
しかし、信用や信頼を築くのは大変な努力と長い期間が必要ですが、崩壊するのは一瞬です。信頼を得たということは、それが崩壊するリスクと常に隣りあわせということを忘れてはなりません。そして、ひとたび失った信頼を再び取り戻すには、それまでの何倍もの努力と気が遠くなるほど長い時間が必要になるのです。
もしも、国際社会の期待を裏切るようなことがあれば、この信頼は一夜にして崩壊し、評価は180度変わることを覚悟しなければなりません。その国際社会の期待に応えることになるか、または裏切ることになるかが問われる場面もまた、本年には予定されています。それは自衛隊を憲法に明記するという憲法改正の国民投票が行われる可能性が極めて高いということが、それです。
近隣の数か国を除いて、国際社会は日本の積極的平和外交によって、世界が特定の大国、例えば中国などの影響下に組み込まれることを避け、世界が、平等で、平和で、さらに発展することを期待しています。そのこともまた日本の役割として期待されているのは間違いありません。
先の外務省調査で分かった日本への信頼感の高さは、日本の伝統文化や国民の民度の高さ、経済力などへの評価であると同時に、安倍内閣の長期化によってもたらされた政治の安定と、安倍外交で確立された「積極的平和主義外交」の成果です。しかし、この日本の積極的平和主義は、自らの国家主権を自ら守るという主権国家としての最低限の機能が十分ではない中での外交方針です。自衛隊が憲法に書かれておらず、未だに自衛隊違憲論の下、自国の主権を自力で守ることすらできない状態にあること、つまり未だ半分自立できていない日本の危なっかしさ満杯の外交といわなければなりません。
自立せずして真の貢献など不可能です。このままでは、いつの日か必ず、国際社会の期待に応えられず、他への貢献どころか、自国の国家主権すら維持できなくなる事態に直面する可能性が高いと多くの専門家によって指摘されています。
その時、日本への信頼は地に堕ち、むしろ軽蔑の対象にすらなりかねません。
そして、それは国民投票が現実となってその結果が否決された場合も同様です。つまり、日本人は自分の国を自分たちの意思で守ることを拒否した最低の国民だという烙印が押されて、世界から軽蔑され相手にもしてもらえなくなりますよ。
自衛隊は支持するけど憲法を改正までしなくていいよ、という意見もありますが、これは「立憲主義」を真っ向から否定する考え方ですし、結果的に自衛隊違憲論の存在を固定化してしまう危険な考え方なのです。
日本の選択は一つしかありません。そうです。「自衛隊の憲法明文化を国民投票で成立させること」です。
自衛隊の憲法への明文化によって我が国は戦後になって初めて、名実ともに独立した国家になれるのです。
勇志では他校に先駆けて「主権者教育」に取り組んで5年が経ちました。その中で最も力を入れて取り組んできたのが「自衛隊を憲法に明記することの是非について」の学習でした。
その勇志の取り組みが正しくて価値あるものであったことを証明することが、つい先月(2月)15日にありました。
自民党の憲法改正推進本部長の下村博文元文科大臣から私に講演依頼があって、自民党本部において、国会議員さん約100名、代理出席約100名計200名を対象に、講演をさせていただいて参りました。
テーマは、先方の要請で、勇志国際高校における「主権者教育」の実践報告でした。
これまで私のような一介の教育者が、国会議員さん相手の講演をするなど夢想だにできませんでしたよ。勇志での
「1、親孝行する青少年たれ、2、志ある人間たれ、3、誇りある日本人たれ、4、役に立つ国民たれ、5、尊敬される国際人たれ」を教育方針として取り組んできたことが、間違いではなかったこと、そして今からの日本の教育界に求められる方向性であったことが、証明されたと確信した瞬間でした。
今後、勇志での実践が全国のモデルとなる可能性が出てくるかもしれませんね。
新しい時代の幕を開けた国際社会での日本の役割、その日本の中での皆さんたち若い世代の役割、さらには日本の若者の中で勇志を卒業した皆さんの役割は何か。
もはや自分だけよければ他はどうでもいいや、という考えが通用した時代は終わったのです。
人権思想も、自分の人権の主張から、自分以外の人の人権の尊重へと大きく進化することが求められる時代です。
そのダイナミックな人類社会を覆いつくす変化の波は、すべてを洗い流した後に、日本の伝統文化「和の心」を浮上させ、そのもとにすべてが収れんされ、真に平和で発展する時代の幕が開けるのではないかと、思えてならないのです。
さあ、いよいよお別れです。いざ、起て!!若人たちよ。輝かしい未来を目指して。
未来は君たち若者のものなのだから!!